デビッド・スミック『世界はカーブ化している』

を、読みました。

題名は、特に邦題だからそうなっているわけではなく、原作からして『フラット化する世界』を充分に当て込んで書かれています。けれど、金融の世界でのグローバル化、および一連のサブプライム・ローン問題について論じている内容は、金融もフラット化しているということではなくて、その逆。先がまったく見通せない状態のことを、著者は「カーブ化」と言っています。

『フォールト・ラインズ』にも似たような記述がありましたが、アメリカ人の心性として、かつてはお金持ちに対する見方というのが「いつかは俺もああなれるんだ」という自分の生活と地続きの感覚があったようです。それがまさにアメリカンドリームということなのですが、昨今は逆で、「あいつらばっかりカネ儲けやがって」という感覚が大勢を占めるようになっているそうです。だから富裕層に対する税制の議論も、前提となる一般市民の富裕層に対する距離感によってだいぶ違ってくるんでしょうね。

アメリカというのは、金融の面でも感じますが、城壁に守られた一つの国というよりは、やはりみんなが参加できる一つのフィールドというか、ある程度の参加費を払えば参加できる広大なゲームのようなもので、プレイヤーはそのゾーンの繁栄を一つのゴールとしてルールブックを書いていく、という非常に特殊な場所なんだと思います。そしてその場所の持つ性格が今や、通信の発達によって世界中に散在するようになった、日本の主婦でもアメリカというゲームに参加できるようになった、というのが現状なのでしょう。

フィールドは、今や四角四面の白線で区切られたコートではありません。まさにカーブが続く巨大な迷路なのかもしれません。一つの信用不安が何倍にもレバレッジされて地殻を震わせる──そんなことが平気で起こるようになっても、著者はやはり自由主義の良い面を見ようと努めます。悪いことへのレバレッジが効く分、良い方向にもこの金融のグローバル化というやつは働いてくれるのだと、信じて。

個別に色々と読むべきところもたくさんあります。今どうなっているかわかりませんが、新生児に確定拠出年金を付与して老年までのあいだに投資運用をしてもらったらどうかとか、日本の大蔵官僚や政治家との色々なエピソードも面白いです。

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