新潮日本古典集成『落窪物語』

を、読みました。

前半のすったもんだに比べてやはり第四巻の異質さは読んでみるとよくわかりました。前後半で作者違う説などやはりなんとなくうなづける面があります。ぼくは詳細まで確認できていませんが、人の年齢とかたどっていくと後半かなり矛盾をきたしているようです。

世間的には継子いじめの物語と片付けられているようですが、この平安までの読者層の中で「継子」という存在が特段レアケースでもなかったんじゃないかと思うと別に小公女的な勧善懲悪では片付かない世界があるような気がします。和製シンデレラかと言われれば決してそうではないような、もっとバランスの(いい意味で)悪いストーリーだと思います。

二巻以降で道頼の復讐劇に転ずるともうあんまり落窪の君の感情とか全部無視して北の方に対してやりたい放題ですもんね。別にそこに拍手喝采というほどでもないかなという気もします。この物語の面白いのは何と言ってもあこき夫婦のコミカルな下働きですね。こっちを語り手に据えたほうがもっと面白おかしかったかもしれません。「落窪の気なんか知らないで道頼は自分が正しいと思ってやりたい放題よね」と、ちょっと北の方側の寂しさも出てくるといいのですが。最後の段で、四の君の再婚話が出てきますが(面白の駒は最後までかわいそう・・・)、継子というか連れ子がいるんですよね。ここに因果応報的な筋立てを絡められるともっと物語に深みが出てくるような気もしたんですが、最後は尼になって終わりでしたね・・・。

ただやはり筋書の細やかさと感情表現の細やかさは、やはり古典として現代にまで読み継がれてきただけのことはあるなと感心します。原文に一度は当たってみることをお勧めできる一冊です。

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