『吉本隆明×吉本ばなな』

今となっては、としか言いようが無いのだが、貴重な記録。父娘の対談集であり、そこには娘から見た父の姿、父から見た娘の姿というのがハッキリと刻まれていて、決して一般読者はもとより文学研究者だって踏み込めない領域の記録。この本が作られる際に、隆明が海で溺れて危うきに瀕するという事件があり、巻末にその時の一部始終も語られています。

個人的には、第三部の吉本ばななへのインタビューは非常に役に立つエピソードがたくさん書いてあった。高校の時の恋人の話や、家族との関係や。ばななはこの時32歳位と思いますが、なんとなく第一期の最後の記録という感じ。彼女の「三十代」は隆明の「修善寺の大患」以降、たぶん死というテーマに対してもっともっとぐっと近づいていっているのかもしれない。それまでだってずいぶんと身近に死を感じ続けてきた作家だし、そういう作品も多かった。一つのターニングポイントとして(愛犬の死というのも、この後訪れてしまうのだが)なにか探れるものがないか、作品側からも検証してみよう。いやだね、「研究」というのは。

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