森時彦『ザ・ファシリテーター』

を、読みました。

会社でファシリテーションの研修を受けたのですが、そのとき教えてに来てくれた講師の方が堀公俊さんという日本ファシリテーション協会の、言ってみれば本家本元みたいな方で、この研修が予想に反してけっこう突き刺さり、なにか参考書でもないかしらと探していたら『ザ・ゴール』と見まがうばかりの、例の進研ゼミの勧誘漫画的なノリでファシリテーションを小説仕立てで解説してくれる本書に手が伸びました。著者の森時彦さんという方も協会の方のようです。

研修でもいろいろと学ぶところはあったのですが、とにかくファシリテーターというのは意思決定を促進する役割を担っているので自分が何でも知っている必要が無いということが、けっこう文化系総合職の自分としては気が楽になるところです。『フラット化する世界』にも書いてありましたが、技術が次々と陳腐化する現代においては、やはり異質な何かを組み合わせる、今までなかったコラボレーションを創出する、こういう役割がどんどん重要になってきていて、まさに日本という先進国の、いやしくも海外にも拠点を持つメーカーに勤める者としては今後どう考えても必須のスキルであることには間違いないと思っています。

ファシリテーションは人間と人間の関係性に働きかけることを主眼としています。対義語はコーチング。これは個人に、流行りのナントカ力(りょく)をつけさせるという発想とは全く違っていて、とにかく人間のポテンシャルを信じることが大前提。人間関係によって人間はいかようにも力を発揮する、という考え方に根ざしているところが、非常に個人的には腹に落ちたというか、なんとなく自分の考えとビジネスという現場をつなぐ一つの紐帯になるスキルだな、と思えました。その意味で、ファシリテーションというのは海外からに輸入概念ではあるのですが、発想としては日本人に馴染みやすいということです。

本書はある会社の立て直しに社内の人間がチームに分かれてアイデアを出し、立ち直っていく様を小説仕立てにしたものですがふんだんにファシリテーションの小ネタを盛り込んであるので台詞の一つ一つが会社生活の場面場面でけっこう応用が効くように作られています。

「要するに、コントローラブルなものに、議論を向けていくということですね」
「そうですね。どうしても人間、他が悪いから出来ないのだと言いたいですからね」
「時間軸を意識させるというのはどういうふうにするのでしょう」
「『昔からそうですか?』とか、『今回だけではないですか?』『繰り返し起こることですか?』『将来はどうなっていますか?』といった質問ですね。データを見るときも、現時点でのスナップショットなのか、時間的な経過が含まれているのか、そういう見方をファシリテーターが促すといい場合があります」
「なかなか難しそうやね」

なかなか難しそうですが、明日から使えます。

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