村上春樹訳レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』を読みました。

分厚さなりに大変面白く読みました。訳者あとがきにもあるように、やはり「金持ちの孤独」みたいなものがテーマアップされているのは『グレート・ギャッツビィ』にも通ずるものがあるのは、そしてまたそれがゆえに役者がこの小説を愛しているというのもうなづけます(ただ、個人的には「金持ちの孤独」なんてものには1ミリも共感しないし、金持ちなんだから孤独に決まってんだろ、同情するなら金をくれ、と言いたい)。

とはいえ、寄り道の多さの魅力というのは本当にその通りで、魅力的な登場人物も多く出てきます。メキシコ人と毎回マーロウから勘違いされるキャンディーは、その迫力もさながらですが、どこか憎めない。この当時にあって移民の「召使」というのがどのような家庭内地位を、社会的地位を持っていたのか不勉強でよくわからないのですが、それを差し引いてもなお、いやむしろかえって、ここまで小説の中で動き回る人物として描かれているのは非常に面白い位置を占めていると思います。勧善懲悪ではなく、マフィアや警察もそれぞれの組織の中で事情を抱えながら互いにけん制し合っているのも、おもしろい。そして「私立探偵」だからこそ、その組織の間を自由に出入りできるのは小説の道具立てとしてはやはりほかの選択肢はないのでしょう。『吾輩は猫である』の「吾輩」並みの「人称」なのだと思います。

そしていやはや、読んでいるとカクテルやらタバコを吸いたくなってしまうのがなんとも……。

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