決定版三島由紀夫全集第11巻

を、読みました。

こちらも主に女性誌に発表された平易な内容の長編小説三編を収めます。特に「夜会服」は後の「春の雪」にも通ずる状況設定の中で当時の当世気質がよく描かれていて、たぶん三島由紀夫の最も得意とする分野ではないでしょうか。文体も非常に安心して読み進められるもので、乗馬が描かれているからではないけれど上質の馬に乗って気持ちのいい作品世界を巡ったような気分になります。気がつけば最後の一文にまでたどり着いていたような。全く読者に負担をかけない、それでいて三島的な構築の美学を依然として保持しているそのスタイルに、「三島の大衆小説・娯楽作」とひと括りに出来ない作家の力をひしひしと感じます。

それにしても作者の好んで描く男性像というのはいよいよ明らかです。コスプレ的ではあるんですけどね…。

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