「新潮」昭和五十八年四月臨時増刊「小林秀雄追悼記念号」

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を、読みました。

何年か前のボーナスで小林秀雄全集を買い込み以来、ちびちびと読み進めています。新婚旅行でパリに行く直前に「近代絵画」を読み込んだり、今年のセンター試験で出題された鍔の文章も試験の直前に触れていたりと歩みは遅いですがなんとか完読を目指している全集です。もう少しで「本居宣長」。

今年は「考える人」や「芸術新潮」でも没後30年(それにしても新潮社は没後30年の区切りが好きらしい)特集を組んだりしているので氏の名前を書店で改めて目にする機会も多いかと思います。今回読み終えたのは氏の永眠直後に編纂された追悼記念号ですが、各界の著名人が追悼文や思い出話を熱く語っています。こういうのを読むと、やはり同時代の人間関係や影響の度合いなどを推し量ることができて、作品を読んでいる限りでは知りえないいろいろな情報(情緒というか)や背景にも触れることができるので読書が全集へ戻ったときにより奥行きを感じられることが可能となるかもしれません。

本論とは全然関係ないところですが、水上勉が原発について触れている箇所があってあまりにも意外ではあったのですがよくよく考えてみれば小林秀雄が生きていた時代にも既に原発はあったし、水上はその故郷を「原発銀座」として奪われた人(それを題材にした「故郷」という小説もあるようです)だということです。それがどうしたと言われればそうなのですが、科学にも通じていた小林は現在の日本をどう描くかは考えてみるべき問題かもしれません。

それにしてもスキーやゴルフもやって旨いものだけを食べ、言いたいことだけを言って長生きした小林秀雄は最高に贅沢な人生を自ら選び取った強靭な人だったのだと改めて頭が下がります。

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