桜庭一樹『青年のための読書クラブ』

を、読みました。
うーむ、さすが読者を裏切らない作家です。直木賞フィーバーの際に買ったまま積ん読中でした。

カテゴリーとしては川原泉『笑う大天使』系の……こう言うのなんて言うの? お嬢様学校学園コメディ? まあ、そんな舞台設定ではあるのですが、形式としてはその「聖マリアナ学園」の一クラブ「読書クラブ」の歴代部員が学園の裏の歴史を書きとどめておく部誌の紙面、というものです。

しかしながら少女小説にとどまらない、この作者の読書に対する並々ならぬ愛情が感じられる良書です。OGたちが経営する喫茶店が出てくる最後の場面など、ああ自分も死ぬまで本を読み続ける人生を送りたい、もう生涯文弱の徒でありたい、などとしみじみ感慨にふけってしまった。

遙か昔の異国で、我々のような者たちが赤煉瓦のビルの一室に集まり、冷たい孤独の狼煙を上げながら書物を読んでいたと考えることは、なかなか愉悦であった。だって我らはどぶ鼠の如く、日のあたらぬ薄暗い場所で集い、読み、議論し、いつしか年老いてただ朽ちていくのである。あぁ、なんという愉悦! なんたる贅沢!

というあたりとか、なんかもうね。

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