小川洋子『ホテル・アイリス』を読みました。

作者はこれを書く必要があったのだろうか? というのが、読んでいるあいだじゅう常に頭の片隅で疑問としてあった。幻冬舎っぽいと言えばぽいのだが、初刊はあくまで学習研究社、1996年刊行。一瞬福武と混同してしまうが、学研とは無関係だ。どういう経緯でこの本が生まれたのか気になるところ(ただ、学研はもともとサブカル的な本はかつてはけっこう出していた印象。文芸のイメージは皆無ですがそのへんもあるのかな)。

いずれにしても「老人と少女の性愛もの」はすでにこの世に(クラシックな名作も含めて)あふれかえっているわけで、小川洋子(ほどの作家が)がそこにもう一冊わざわざ付け加える必要もなかったとは思うのですが、キャリア初期としてはいろいろと試す価値があったのかもしれません。ただ、文体の静謐さはすでに健在。

2022年に映画になっていますね。作者としては故郷の瀬戸内海のイメージなのでしょうが、台湾を舞台に置き換えているようです。奥原監督って「青い車」の人ですよね。

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