内田樹・春日武彦『健全な肉体に狂気は宿る ――生きづらさの正体』

を、読みました。内田樹の本は時々読みたくなるんだけど、基本的にこの人の本は別に何か答えが書いてあるのではなくて、考えるプロセスがそのまま活字に写されているので、やはり読みたくなるタイミングというものがあるし、読んで沁み入る読み手側の精神状態というのもけっこう選ぶ人だと思う。本書も、まあ春日武彦との濃密な放談、という感じで、ふたりの本来的な強みがよく出ている本だと思います。

とにかく、不確定、未決定の状態にあることへの耐性ということについて書いてある。成熟した大人というものが概念ではなくて実体としてあるとしたら、すぐにわかりやすい答えに飛びつかないというのも一つの大きな要素なんだと思います。それこそ橋本治の「わからない」という方法にもつながるなあ。内田樹と言えば、ぼくは一時期構造主義のハシカにかかっていた時に『寝ながら学べる構造主義』を読んだのが最初なんですが、その後の著作群を見ても、この本自体があまり内田さんの本流ではないような気がして、やっぱり芸風としては橋本治にも通じる何かがあるのでは……とにかく「やってみた」の精神で時分の理解するところを丁寧に言葉に直していくところ。そういうのは本当に見習いたいですね。せかせかとあせってあっちフラフラこっちフラフラにならないようにね。

会社でも色んな仕事がありますけど、とにかく短期的な効果がすぐに出るものをかき集めるという仕事も大事なんですが、「わからなさ」に耐えながらすこしでも「わかる」を紡いでいく仕事というのも確かにあって、今のぼくは後者に近いです。どっちが偉いとかではなくて、単なる役割分担なんだけど、やっぱり使う脳ミソの部位が違うというか、脳の中に筋肉があるとしたら違う筋肉を使っている感じはします。

今日は月曜日なので早めに帰ってきました。

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