決定版三島由紀夫全集第2巻

を、読みました。所収は「愛の渇き」「青の時代」「夏子の冒険」。

「愛の渇き」は田園を舞台に狭い人間関係中でうごめく嫉妬と愛憎と、最後にはその結果としての殺人で唐突に終わるという長さの割にはかなり密度の高い作品です。三島としてはこの「女中との出奔」というのはかなり好んで(?)描くバターンのような気がします。「春の雪」ではしっかり夫婦にさせていますが、「みね」に対して決して好意的な描き方はしていません。「愛の渇き」でも女中「美代」は妊娠発覚後結婚の許しを得たにもかかわらず、悦子の嫉妬によって暇を出されてしまいます。作者に取って「女中」という存在が、作中でどこまでも憎むべき存在としてこだわらざるを得なかったのか、心中はもはやわかりませんが関連研究があれば紐解いてみたいです。

「青の時代」はもはや言うまでもありませんが「光クラブ事件」に材をとった作品です。ただ、単に事件の顛末を小説化したということではなくて、マイケル・サンデル流に言えば「それをお金で買いますか?」という問題意識を事件をモチーフにして三島流にアレンジしたものと言ったほうが正確です。三島自身は失敗作のような扱いで言及しているようですが、もう破滅しか残っていない状態で終わらせている本作のラストシーンは、個人的にはなかなか印象的で好きなものです。

「夏子の冒険」はしっかりオチのつく物語でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA