決定版三島由紀夫全集第6巻

を、読みました。所収は「金閣寺」「永すぎた春」「美徳のよろめき」。

「金閣寺」はもう何度も読んだ名作。なにより柏木と鶴川という脇役の造形は何度読んでも素晴らしい。かつてはぼく自身も鶴川のような友人が欲しいと感じた時期もあったものです。吃音を主人公に据えるのはたぶん平成現代の小説家にはもう出来ない芸当ですね。

「永すぎた春」はその名のとおり、ある東大生と、東大前にあった古本屋(木内書店というのがモデルなんだそうですが、今はもう無いようです)の娘さんの婚約期間の活劇。「永すぎた」というのは卒業してからでないと結婚するのが許されなかったためです。軽快で面白いですが、三島の好んで描く婦人像がこれでもかというくらい活躍します。太宰で言えば「饗応夫人」のような。

「美徳のよろめき」はあまり感心せず。心理小説という評価もありっちゃありですが、終盤に差し掛かるに連れて急に登場人物が増えるのはちょっと失敗作というべきでは??

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