岩本ナオの地元観

やはり、上手い。

東京の大学を出た主人公の銀一郎は地元の戻ってきて村役場に就職する。観光名所も名物土産も若い人達もいない田舎で、その日常は進んでいく。数少ない仲間との微妙な距離感、あるいは置いてきた「東京」との距離感。

ロマンチックラブイデオロギーに毒されていない結婚観がまだまだ生きている「地方」での恋愛を描くと、こんなになるのかという驚きが、むしろこれはぼくがいま同じような「地方」に住んでいる中で「それがむしろあたりまえなのか」という気づきにもつながる。

『Yesterday, Yes a day』(これはほんとに表紙にだまされる)と言い、岩本ナオの描く「地方」は間違いなく少女漫画の範疇を見えたリアルさを持っているし、そして日本にいるこの漫画の読者にとって、むしろ都会よりもここに描かれた日常の方が「日常」なのではないか? だって、東京ってほんのほんの一部でしかないわけだ。

望むべくは、「地元としての東京」「地方としての東京」を描いた作品って何かないかな? ということ。下北的・中央線的な上京物語はもう食傷なのだ。そういえば最近魚喃キリコをめっきり読まなくなったのもそのせいかもしれない。岩本ナオの描く当たり前さの新鮮さ、それに続くのは……やっぱり浅野いにおか?

そんな意味でも青木淳悟の『このあいだ東京でね』は無上に面白かった。


あるいはNHKの特集「沸騰都市」。考えるネタはたくさんある……。

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