豊島ミホ『ぽろぽろドール』

『神田川デイズ』以来ちょっと気になっている作家豊島ミホ。『ぽろぽろドール』を読みました。人形をめぐる短編集です。なかなかよい。

それぞれのお話において人形はいろいろなものを象徴しています。人に触れられたくない自分の恥部とか、やっぱり人にはあまり語れないような理想とか、そしてその理想というのは決して実現されることがないとわかっていたり、あるいは忘れられない過去とか、そういうもの。

装置として人形が使われていることにいささかのわかりやすさが気になる人もいるかもしれませんが、ぼく自身は結構すんなりと世界に入ることができた。たぶん描かれている状況設定が自分に近かったりするからかもしれない。

既に最新作『東京・地震・たんぽぽ』も積ん読されているのでこれも楽しみ。過去の作品も時間があったらさかのぼって読んでみたい。んー、久しぶりに全作品読みたい作家リストに載りそうです。

あとは最近読んだ本の紹介をば。

ネーミングセンスだけ。三浦展は当たりはずれ激しい評論家なんだけど、この本は「郊外で少年犯罪→郊外が悪い」というかなり短絡的な話を展開していて、郊外がいかに悪いかという部分はまあ多少は読めるんだけどいかんせん、論理が強引。

これも郊外関係で読む。あんまり主張系の本ではなくて、図版が多く今の日本ってこんなんなってますわー、という本。もちろん著者も判断を読者に意図的にゆだねているので別にそれはそれでよし。日本橋と首都高を巡る問題と上海の考察など面白かった。

よしよし、まだこういう本を読んでも感動できます。毎日新聞に連載されていたCoccoのエッセイで、毎日新聞のサイトで読めたときは読んでいたのですが、本になっているのをすっかり忘れていた。まあもう、これはあれこれ外野から言う本ではありません。

金原瑞人訳っていうのが粋だね! ヴォネガットの遺作です。常に宇宙から地球上の愚かな歴史を乾いたユーモアで描いてきた彼の、最後に至るまで一貫している批判精神にしびれますよ。

渦中の人の最新刊、フツーに売ってるし! 彼の趣味趣向を知っている人にとってはもう再確認するだけのエッセイですが線を引っ張りたくなる箇所多々。この美意識には共感できます。早く戻ってきてくれ、野ばらちゃん。

個人的にとても気に入った。本ばっかり読んでいるとこれでいいのか、このままでいいのか、という不安に駆られることもありますが、いいんだよそれでと後押ししてくれるすばらしい本です。あらすじ本はダメだとか保坂和志、エリックホッファーも出てきて、なんだか本好きな人は考えることが一緒なんだなーと一安心。

著者二作目。デビュー作『ようちゃんの夜』もたいがい読みづらい(これはほめ言葉ね)文体だったのですが、これもまた磨きがかかっていい味を出しています。素人臭さと結構紙一重な危うさがこの人の描くものの魅力なのかもしれない。職業作家っぽくなっちゃったらつまらなくなるかもしれない。今のところ、新設された新人賞の第一号作家というマイナーさが読む者の小説観に揺さぶりをかけてきます。

まあざっとこんなところ。今月の文学界は珍しく演劇特集で長塚圭史の新作が載っている! ので買ってきた。未読。あとは島本理生『あなたの呼吸が止まるまで』、小川洋子『夜明けの縁をさ迷う人々』、柄谷行人のシンポジウムシリーズなど積ん読中。なるべく感想書いて残しておきます、これからも。

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