現在に過去をよみがえらせたい

『SEの読書術』を読みました。


文学畑の長いぼくにとっては「読書術」と言えばやっぱりいかにして古典に近づくか、とかどの小説を読むべきか、とかいう話ばかりになりがちなのですが、現役SEの方々に取材したこの本に出てくる読書術は非常に実践的で明快。「JavaのVM」だとか技術的な細かいテクニカルタームはよくわからなかったのですが、充分に普段の生活に取り入れることのできる内容を持っています。

どちらかというと技術系の本は、内容をおぼえるんじゃなくて、その内容にたどりつくための検索方法をおぼえるようにしています。(後藤大地氏)

これなんかは普段の仕事でも使えそう。会社で使っている使っている経理のシステムにはけっこうひと癖ふた癖あって歴代の担当者による手作りマニュアルがあるんですが、会社に入った頃はマニュアルを見ないで仕事をやれるようになることを勝手にぼくは目指していました。でも「マニュアルを見ながらでいいから間違いなくやれることの方が大事だ」と先輩に言われて考え方が変わりました。大事なのは、ある業務をしているときにそのマニュアルの中から必要な情報をいかに素早く取り出せるか、ということ。付箋とか赤ペンなんていう原始的なツールがけっこう役に立つのは言うまでもありません。

開発っていっても、「動けばいい」っていうものではなくて、設計にしても、実際、コードを書くにしても、見た目はわかりやすいインターフェースを作るにしても、きれいなものっていうのは使いやすくて長持ちする。複雑なものっていうのは長持ちしない。それはもう決まっているんです。(荒井玲子氏)

このように言う荒井氏は白州正子の『日本のたくみ』を紹介します。意外とSEには文学的感性が必要なのか? 他のインタビュイーにも『知的生活の方法』や『荘子』、ソシュールまで引き合いに出す方がいたりして新鮮でした。高い壁の向こう側にいる人が自分と同じものを見ていたという安心感。高度な専門的知識や技術を必要とされるSEも文学を必要としているんだという発見。例によって大げさですが。

自分が経理に配属されて未だにぜんぜん興味がわかず、文学的混沌(もちろんそれは一面的な誤読ですが)に後戻りしたい! という幼稚な甘えをぬぐい去るためにも、ちったあSE的な涼しい風を頭の中に送り込みたい。うーん、もしかしたらぼくの頭の中は大学の四年間でだいぶなまっちまったようです。受験生だったときの必死さ。あれをとりもどしたい。過去に閉じこもるんじゃなくて、現在に過去をよみがえらせたい。そう思います。

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