筑摩全集類聚『太宰治全集』別巻

を、読みました。

全集の最後を飾るのは、奥野健男の編集による太宰関連の重要論文や交友の記録のアンソロジー。井伏の「解説」は、本当に、記録をつけていたからだとは言え、情景が目に浮かぶようで、壇の変な小説仕立てよりもずっとなにかこの人の太宰に対する思いみたいなものが伝わってきた。そりゃあ、師匠と悪友じゃ違うのかもしれないけど。ただ、無頼派とくくられるよりもずっと以前から太宰には同郷の友達がたくさんいて、彼らの追悼文など読んでいると、「ああ、本当に太宰は死んでしまったんだな」とずいぶん昔の出来事のはずなのに、惜しむ気持ちが湧いてきます。あの当時、ごく身近にいた人間にとって、太宰に自殺で死なれるというのがどれくらい口惜しいことだったのかが、もちろんそれは今だって事情は変わりませんが、伝わってくる文章がたくさん並んでいます。一次資料としての全集の役割としてはこれで充分でしょう。今官一の「碧落の碑」は、本当にいい文章。

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