筑摩全集類聚『太宰治全集』7

を、読みました。

この巻は「津軽」「惜別」「お伽草紙」の三本立て。「津軽」は何度か読んでいるはずなんたけど、改めて読み返してみると結構注釈まがいの記述が多くて、案外と「佐渡」とか「東京八景」みたいな現在進行形に物語が展開していく面白さとはちょっと違う感じがします。何となく最後の「タケ」との再会シーンばかりが印象的ではあるのですが、終わり方もこの作者にしては随分とあっさり。

このあたりはそもそも「新風土記」シリーズとして依頼された背景も案外色濃いのかもしれません。後の時代から作品を読む人は、大抵は文庫本で目にするので同時代で刊行されたときの「形式」に無頓着になってしまうあまり、妙な誤解を抱えたままになってしまうこともあるのでしょう。例えば歌謡曲が収録されているアルバムとともに語られるように、小説というのは初刊時の単行本としての顔にもっと意識的であるべきなのかもしれません。

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