を読みました。
太宰にかぶれたのはまさに中二の時でしたが、あれほど一人の作家に熱中したのは本当に後にも先にも太宰だけだったように思います。ただ、以来読み返すことはあまりなくて、というのも、たぶん若かった時の自分の読み方を思い出すのが気恥ずかしいというのもあったのかもしれません。あらためて、今自分が三十歳を越して、家庭を持って、どんなふうに読めるのかを確認したいというのがまず目的としてあります。本当に、家庭の幸福は諸悪の本なのか……云々。
太宰が死んだのが38歳の時で、それがほんとうに信じられません。あれだけ多種多様な、ほんとうに千変万化の色彩の作品群をこれだけ短い作家生活の中で生み出したのは本当にすごいことだと思います。しばらく、その世界で楽しもうと思います。
しかし「虚構の春」はおもしろいね。作家としての太宰治を最大限演出することをまた一つの小説にしたててしまうのだから、こういう芸当は本当に小説ならではだと思います。