岩本ナオ『金の国 水の国』

を、読みました。

最新刊が出ていることをつゆ知らず、ひさびさにネットで検索してみたら出てきたので早速買ってきました。少女漫画の単行本にしては分厚いサイズで、読み切りです。そしてまたしても「少女漫画」をアップデートしてきました、本当にこの作者はすごい、の一言につきます。

トルコかアジアか、あのあたりを思わせるA国とB国とが婿と嫁を互いに差し出し(素直にそうなっているわけではないのですが)、最終的にいがみ合っていた2つの国家が結ばれていく、その有様が恋愛あり、権謀術数あり、また岩本なお独特の笑かしが存分に詰まった贅沢な一冊です。政治を題材にしてはいますが、一つ一つの出来事は人間と人間の関り合いであることは徹底されていて、そして、この作者のすべての作品に言えるようにスーパーヒーローなんて人物は一人もおらず、お互いがお互いの足らないところを補い合ってお互いの幸せを追求していく、その健気な人間の姿が胸を打ちます。そしてそれは国家と国家の関係においてもまた、同じことなんですね。

『イエスタデイ〜』に出てきた名前忘れましたがほんわかした太った女の子を髣髴とさせる主人公と、ナランバヤルもまたこの作者の好んで描く男性像の一つの典型なんだろうなあ、と、岩本ワールドにしみじみとひたれる一冊。登場人物も、世界観も、いよいよと幅が広がっていきます。次回もとても楽しみにしています。

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