新潮日本古典集成『萬葉集』三

だいぶ注釈無くても読めるようになってきました。新潮日本古典集成は、他に読みたい本がないときに読み継いでいるため、これ完読することはなかばライフワーク的になっているのですが、それでも国文学出身者として定期的に古典と触れ合う時間は大切にしておきたいものです。最近、新潮社は箱なしの「新装版」なるものを刊行しているようですが、なんとなく小林秀雄全集完結後にいきなり注釈付きの普及版が出て肩透かしを食らったような感じを思い出します。しかし大型書店行って全集コーナー行っても、誰も買わないよね。今日池袋の三省堂行ったら、「デタラメに全集を一冊買う」みたいなよくわからないコーナーがあったけど、回転率なんかとんでもなく低いああいう本は、本屋も売るのに苦労するんだろうね。

それにしても三巻目の本書は巻の10〜12を収めていますが、わりと相聞歌とか恋愛の歌が多くて、ありきたりな感想だけど、今も昔も人の心の動きというのは変わらないもんだなと感じいります。あと、短い言葉によってぱっと風景が見えてくる、そういう力が、千年以上前の言葉であっても十分に力を蓄えたまま今に通じているということに今さらながら驚くし、万葉仮名で書かれていた本文を漢字かな交じりに直して流通させている、その古来の研究者たちの脈々たる努力の営為にも、思いを馳せると頭がさがる。

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