スティーヴン・キング『書くことについて』

を、読みました。

キングの小説は、実は一冊も読んだことがないのですが、この本はそんな読者でも楽しめる本です。この本を読み終えた時、物語を書きたくなります。

白い紙。新しいファイルの、真っ白な画面。この本にも出てきますが、やや古い言い方をすれば、新しいフロッピーディスク──今ならさながら新しいUSBメモリ? を前にした時、恐怖よりもワクワク感が蘇ってきます。むしろ、この本を読んでいる途中から「ああ、早く読み終わって、白い紙に向かいたい!」と、思わせてくれるいい本です。

前半はキング自身の半生を描きながら、書くことについて筆者がいかに立ち向かってきたかその軌跡が描かれます。そこに悲壮感は全く無く、やれば出来るんだ、練習すればうまくいくんだ、という自信に満ち溢れています。そしてそういう自信を持つことが大事なんだと教えてくれます。

後半では、副詞の多用や受動態を戒めたり、クリアーさとシンプルさを目指すための実践的な実例だとかを紹介してくれたりと、実作上のコツを色々と伝授してくれます。こういうのもある、こういうのもある、と羅列するのではなく、キングの小説観に根ざしたものなのでとても説得力があります。なにより、第一部で描かれた半生に基づいた小説観になっているので、ますます納得感があります。

以前この本は『小説作法』として単行本化されていましたが、あれから増補された10周年記念版として再発されたものです。以前の本も読みましたが、あんまりピンとこなかったものです。そのときのぼくはさほど、どうやって書いたらよいのか? ということに問題感を持っていなかったのかもしれません。求めるときに与えられる。求めなければ与えられた時に吸収も出来ない。再読の喜びというのは、そういうことなのでしょう。

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