まさかの新刊!
高野文子を同時代で読めるなんて、こんな幸せなことはありません。
いつもいつも思いますが、そして今回も「あとがき」のはしばしからにじみ出ていますが、素朴な絵柄の後ろで、ものすごい時間と綿密な考証をしているのが伺えます。
本書は、4人の科学者の若かりし頃をドミトリー=寮に一堂に会させ、そこを管理する寮母(かの「黄色い本」に夢中になった少女が・・・と勝手に想像を膨らましてしまうのですが)と一人娘との交歓をほほえましく描いたもの。
そして同時に、科学読み物の丁寧な導入書にもなっています。
漫画の一つ一つが、湯川や中谷やの実際の著作からの引用を元にストーリーが膨らませられていて、そしてこのふくらませ方が本当に、なんというか、胸がむせ返るほどの幸福感を与えてくれます。子供の頃、図鑑を熱心に読んでいた時のような気持ちが蘇ってきます。
本当に、文学部なんてところを出てしまうとまっとうに本を読むことができなくなるなあ、としみじみ感じます。不思議に思う心、それは大人にこそ思考の出発点として常に心得ておきたいものです。