ちくま日本文学『内田百けん』

を、読みました。

「けん」の字が出ませんね。

本書は大型書店に行けば必ず揃っていた筑摩のポケット文学全集が文庫ソフトカバーになった第一弾であったと記憶しています。内田百間くらい嗜んでおこうと若かりしぼくは買い求めたものでしたが、こちらも途中まで読んで長らく本棚の奥に眠っていました。

改めて読み返してみると、いかに現代文学の多くが、おそらく映画からの影響を明に暗に受け過ぎて、視覚に偏った叙述に成り下がってしまっているかがよくわかります。百間の文章には、視覚と同じくらい聴覚や臭覚を呼び覚ます記述にあふれています。文章に抱きすくめられるような、そしてその語り口調で泥棒や幽霊の話をされると本当に背筋が寒くなるようです。

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