平野啓一郎『モノローグ』

を、読みました。

平野氏20代のエッセイ集です。と言いながらも、著者の好む「全集」の比喩でいうならば、別巻「補遺」にでも収録されるような断片まで含めたもの。一冊あると非常に便利と思って、これが出たときに買っておいて7年間本棚に眠っていたのをたたき起こしました。

それにしても平野啓一郎はひとつの事件でした。今となっては本当に、なぜ『日蝕』があれほどセンセーションを巻き起こしたのかわかりませんが、その後の芥川賞の世代交代を見るに付け、ああいう記者会見が一つのマスコミ的な定例のお祭りになったことの(功罪も含めて)この人が発火点となったことは疑い得ません。

若い作家がデビューして、その後もコンスタントに作品を発表し続けることがいかに難しいかは、毎年輩出(排出?)される膨大な「新人賞受賞作家」のその後を見るにつけ明らかではありますが、著者が意識的に、むしろ過剰なくらいに意識的に自身の「文学史」を更新し続けている姿を追えるのは一読者としてうれしいものです。

その、初源に著者の、あるいはあの当時の日本の文学の世界が背負っていた「若さ」や「イライラ」を思い出すのにも、非常に記念となる一冊。

それにしても絶版のためかamazonさんではかなりの高値が付いています。

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