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田口ランディ『馬鹿な男ほど愛おしい』
晶文社からは何冊かエッセイ集が出ていますが、これが一番ぼくには面白く読めました。31編のエッセイが収められていますがそのどれにも線を引きたくな
る記述があります。「恋と仕事と友情と家庭の間でゆれるすべての女性に捧げる恋愛エッセイ」と銘打たれていますがぜんぜんそんなことありません。「恋と仕
事と友情と家庭の間でゆれるすべての女性」の対極にいるぼくが読んでも面白いんですから。ちなみに田口ランディさんはうちの大学の講義に月に一回姿をあら
わすので拝見しに行ったのですが、いやもう、「ランディですッ」という貫禄を感じました。 |
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勢古浩爾『ぶざまな人生』
『自分をつくるための読書術』同様、やっぱり硬派です。この本にもたくさんの本が紹介されているので読書の幅が広がること間違いないでしょう。ただし齋
藤孝について共感しながらも「わたしは本を読むバカを見すぎた。本を読む誰もが、齋藤や私のように立派な人間になるとは限らないのである。〔中略〕本を読
まなかったとしても、私はもともと立派だったのである」というところなど、笑いを誘いながらもなかなかうならせます。ただ本を読めばいいってものじゃな
い。ただ考えればいいってものじゃない。じゃあどうすればいいのか。そのヒントがたくさん書かれています。 |
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三島由紀夫『若きサムライのために』
三島由紀夫のスタイルといえば『仮面の告白』を読むのが先決です。太宰『人間失格』も然り。名作はわざわざあげるまでもないので『若きサムライのため
に』を紹介。なぜかアマゾンでも売れ行き抜群。決して文学的な雰囲気に毒されずに文学を追求する強さを、この本を読み返すたびに思います。三島のエッセイ
は時には小説よりも高く評価されることがあって、角川文庫『不道徳教育講座』や中公文庫『太陽と鉄』も抜群に面白いです。 |
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菜摘ひかる『菜摘ひかるの私はカメになりたい』
風俗嬢という面ばかり強調されることの多い彼女ですがこの本は自分について正直に語られています。田口ランディ『馬鹿な男ほど愛おしい』と一緒に読む
と、同じネット系物書きである二人のスタイルがどう違うのか、どこが共通しているのかが見えてきて面白いかもしれません。
2001年の暮れ、若くしてお亡くなりになられました。ご冥福をお祈りいたします。 |
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ドリアン助川『ドリアン魂』
ぼくなぞ完全にジャンベルジャン世代です。あの番組を熱心に聴いていたことをけっこう恥ずかしがる人もいるんだけど、けっこうぼくはハマって
いましたねえ。今も録音したテープなんかが残っていて、たまに聞くと真っ暗な部屋の中、目をぎんぎんに開けてうーんとうなりながら一緒になって悩んでいた
自分を思い出します。他人の悩みに同調できることが少なくなりました。いつまでも他人にばかりかかずらっているわけにはいかない。同時に、いつまでも自分
にばかりかかずらっているわけにはいかない。そのバランスが難しいと思います。 |
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岡本太郎『強く生きる言葉』
「芸術は爆発だ」も入っています。自分を愛したり自信を持つ必要はなく、弱いなら弱いまま突き進め! というスタイルです。本当にそうで、「もう少し強
くなってから人生を始めよう」なんて言っている間に時間はどんどん過ぎていってしまう。始めるなら今、ここから、生きはじめよう。そんな気にさせてくれま
す。 |
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角田光代『愛してるなんていうわけないだろ』
直木賞おめでとうございます、と言いながら実は角田さんの小説は一度も読んだことがなく、左の写真に写っているのはエッセイ集です。子供っぽさと大人ら
しさとのあいだで揺れたり揺れなかったりの著者がささいなことに笑ったり泣いたり怒ったりする様は「こういう人っているよね」という共感とともに「どうし
てこういう人が自分の周りにはいないんだろう?」という思いも誘います。『これからはあるくのだ』は文春文庫。どちらもおすすめ。
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南条あや『卒業式まで死にません』
ネット上でこの本を改めて紹介することにどれほどの意味があるのか……それくらい有名な本です。本には彼女が亡くなるまでの三ヶ月分が収められています
が日記の全文は「南条あやの保護室」というサイトにあります。自分の内側をえぐり出すような内容ではなく、彼女の視線はいつでも外へ向いています。そして
そこにちゃんとユーモアがある。彼女の一挙手一投足に笑い転げて最後の日記までたどり着いたときの気持ちはなんとも言えません。 |
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高野悦子『二十歳の原点』
ある女子大生の、自殺までの日記です。加えて1969年という時代の記録でもあります。大学のレポートで一度安田講堂の攻防戦について調べたことがあり
ます。調べれば調べるほどあれってなんだったんだろう、という疑問ばかり浮かんできました。当時の文学も幾つか読んではみたのだけれど(『僕って何』、
『されどわれらが日々』、黒井千次、高橋和巳の著作など)わかりません。あの怒りのエネルギーはなんだったのだろう。今、同じ大学のキャンパスにいて思う
ことは茫漠としたままです。 |
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エリック・ホッファー/中本義彦訳『エリック・ホッファー自伝』
シモーヌ・ヴェイユと共に労働する知識人として紹介されれることの多いホッファーですが、7歳で失明し15歳で
回復、義務教育は受けず、季節労働者として転々としながら思索を深める、なんて紹介文を読んだが最後、彼のとりこになってしまう人は多いはず。とにかく、
読んでみることをおすすめします。勢古浩爾も大絶賛です。 |
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荻野文子
『ヘタな人生論より徒然草』
「オギノアヤコ」です。マドンナ先生ですね。ぼくはずっと「ハギノフミコ」と読んでいました。ごめんなさい。
「徒然草」の解釈本というよりは荻野氏の人生論が徒然草の記述によって補完されているという感じです。ふだん若い人と接している人の書いた本は熱があっ
ていいですね。構成が多少齋藤孝チックですが、阪神大震災を経験した著者の記述には読むべきところがたくさんあります。 |
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マルクス・アウレーリウス『自省録』
ストイックという言葉も死語になりつつある現代にドロップキックするためにこの本を読んで克己精神を養いましょう(笑) でも、冗談抜きで骨抜きにされ
た生活を少しでも自覚的に生きたいと思ったら有益な本です。アウレリウスの視線は常に現在にあり、過去や未来に心を悩ますことなく現在に全身全霊をかけろ
と訴えてきます。箴言の宝庫。
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