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哲学の練習問題
本田有明『哲学の練習問題』

 西研に同タイトルの著書があってそっちのほうが有名なのだけど、ぼくはこちらしか読んでいません。全部で50の「練習問題」がついています。「『本当の 自分』が見つけにくいのはなぜか?」「『罪の問題』を宗教で解決するのは正しくない?」「人に危害を加えない『自殺』なら罪にならない?」などなど。非常 に論理的な語り口なので、読むだけで頭がすっきり整理されます。もちろんこの本を出発点にして自分のスタイル、生き方を考えなければこの本を読む意味 はないと思います。答えを求めて本を読むことくらい時間の無駄なことはないのです(経験者は語る)。
大人になるための思想入門
新野哲也『大人になるための思想入門』

 新野氏のスタイルが満遍なく書かれていますが、「大人になるための」という条件がついているためにやや普遍化された形で説かれているところがこの本のい いところ。伝統的な哲学的思考が背景にあるのでなかなか説得力もあり、「著者の見解→対話」という構成になっているので多角的に大人というスタイルを考え ることができます。

 若い時代は意味を求める。それが苦悩の原因である。そ の苦しみから逃げるやつは卑怯者だが、いつまでもその苦悩を引きずっているやつは愚か者である。(本文より)

 ……大人になるのは大変のようです。
自分を作るための読書術
勢古浩爾『自分をつくるための読書術』

 硬派な本です。

 本のカバーは外し、頁は折り、線は躊躇なく引くこと。 裸のままポケットにつっこみ、表紙が折れ曲がろうと地ベタに落ちようと気にするな。それでも気になるようだったらまずその神経から直してもらわなくてはな らない。革カバーなどは論外である。(本文より)

 ね、硬派でしょ。「自分をつくるための」なのでおのずと作者の人生観も伝わってきます。各章ごとにブックリストがついているのでこの本を出発点にしてい ろいろ考えることができます。読書体験が大切な人にとってのスタイル論。
個人でwebサイトなんてやめておけ
梶充生『個人でwebサイトなんてやめておけ』

 個人でwebサイトなんてやめて おけ? それはなぜか。自分が人に伝える内容(コンテンツ)を持つ人間かどうかバレてしまうからだ。筆者は仲間内だけで馴れ合う掲示板や捏造された個性を キープするだけのサイト、更新が少なく長く続かないサイトなどをばっさばっさと斬っていきます。なかなか刺激的な本であるだけに、自分が管理者であれば自 分のサイトに対する一つの試金石にもなります。「個人サイト」という視点から見た人間論にもなっているので自分のサイトを持っていない人が読んでも面白い と思います。ぼくもサイト運営に迷ったりしたとき、この本を読んで初心を思い出すようにしています。
考えることで楽になろう
藤野美奈子『考えることで楽になろう』

 著者の藤野氏は漫画家で、彼女が考えたことに西研がアドバイスしていくという本です。九つの問いからなりますが著者の実体験、それも誰もが共通して持っ ているだろう体験が元になっているだけになかなか身につまされ面白く読めます。十代の間だけだと思ってた「悩む」ことは実は死ぬまで続く。そこで「考え る」ことを身に付けることで「楽になろう」という本です。
座右のゲーテ
齋藤孝『座右のゲーテ』

 バカ売れ、らしいです、この本。ゲーテのスタイルを分類・整理して、現代人も応用しよう、という本です。要は『「できる人」はどこがちがうのか』『天 才の読み方』の系譜に連なる著作です。新書のわりに字も大きく、そこも受けているのかもしれません。
 はっきり言って当たり前のことしか書いてありません。けれど、複雑な人間関係の中で煮詰まったとき、こういうシンプルな解決法を示してくれる本が手元に あるのは決して無駄ではないと思います。最近『座右の諭吉』も姉妹編として出されましたが「ゲーテ」の方がおすすめです。
ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法
福田和也『ひと月百冊読み、三 百 枚書く私の方法』

 本の読み方がわからず、何か指南書はないかと探していたときに出会った本です。古典を苦労して読めとかいう話ではなく、非常に具体的な本の読み方が書い てあります。ぼくはこの本をきっかけに抜書きの楽しさを学び、手帳も一冊にして文房具にこだわる楽しさも知りました。なんと言うか、福田氏の本への愛情も 伝わってくるいい本です。
ジンメル・つながりの哲学
管野仁『ジンメル・つながりの哲学』

 出会いとはなにか? 人間と人間は決して生身のまま出会うわけではなく、必ず社会的な場所で社会的な役割を担って出会う。しかしそれは絶望すべきことで はなく、そここそが出会いをかけがえのないものとするための出発地点なのだということを(それだけではありませんが)ジンメルの理論を引用しながら非常に わかりやすく解き明かしてくれます。特に相手のことを全て理解し相手からも自分のことが全て理解されることが「本当の」人間関係だと思っている人、必読で す。
「聴く」ことの力
鷲田清一『「聴く」ことの力』

 スタイルはすでに思想である。ある思想 を学(まね)ぶというのは、まずはある思想が世界を見る、世界に触れるそのスタイルに感応するということ である。(本文より)

 おなじみ鷲田清一の臨床哲学。この本では哲学がこれまであまりにしゃべりすぎ、聴くことを忘れていたという中心主題を様々に展開してきます。
 「物語」には「語る」者の存在だけでは成立しません。そこには必ず「聴く」者がいるのです。「聴く」者の態度によって「物語」はいくらでも変わってし うこと、そしてそれだけに「聴く」ことの力はコミュニケーションの中で非常に重要であることを教えてくれます。
知的生活の方法
渡辺昇一『知的生活の方法』

 これも昔から有名な本ですね。最近は渡辺昇一と聞くだけでエッと思ってしまう人も少なくないかもしれませんが、この本自体は「イデオロギーと関係なく」 書かれているので大丈夫(?)です。主に著者の学生時代の経験を元にどのようにして本を読むべきかが説かれています。大事なのは、わからないものに対して は正直にわからないと言うこと。そして「わからない」に耐えること。橋本治『「わからない」という方法』(集英社新書)と一緒に読むと効果倍増でしょう、 きっと。ちなみに古本屋に行くと『続・知的生活の方法』がたまに売っていたりします。
村上春樹、河合隼雄に会いにいく
村上春樹・河合隼雄 『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』

 「村上春樹のスタイル」という枠でなにかを語る時必ず引用される本がこれですね。ぼくたちが日本人であること、日本語で考えているということ、そして日 本の歴史について考えることがスタイルについて考える際にも必要だということに気づかせてくれます。この本を読んでから村上春樹の小説を読みなおすのもい いかもしれません。論理や物語や意味で分析しきれないもの、それこそが小説の面白さなんだと思います。
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