
接続詞が見つからない──学生小説三部作
椎名要
【内容紹介】
◆大学生なら自意識過剰だよな? だれでも思い出せば思い当たる大学生の頭の中を3つの短編小説に閉じ込めました。
◆収録作品
・「生きるとは造花と見まがうほどに美しい」
海辺で買春まがいに巻き込まれた「ぼく」は帰京後、さらに恋人の家族がかかえるドメスティックバイオレンスにも片足を突っ込む。一連の事件でお金が無くなった「ぼく」は渋谷の雑居ビルに構える「アトリエ」の住人、永井博士のアルバイトに応募すると、再び元の海辺へナンセンスな作業内容と共に送り返されるのであった──
・「4/5(ごぶんのよん)のカルテット」
ツルゲーネフ輪読ゼミで知り合った大野さんへ「ぼく」は淡い感情を抱きながら、彼女を通じてロシアのクラシック音楽史の世界に触れ始める。ビオラを演奏する大野さんは学園祭でカルテット演奏会を催すが、そこには5人目のメンバーが存在した──
・「接続詞が見つからない」
大学生の「ぼく」はある日、住んでいるアパート近くの川べりで殺人事件があったことを知るが、犯人と目されたのはいつも通っているスーパーの若い店員であった。「ぼく」が思いを寄せる森田さんは、インターネットの世界ではその文章で一部にファンを持つほどになっていることを妹から知らされる。「劇的」な出来事への「解釈」に迷いをきたしながら、「ぼく」は森田さんへの告白を決意するが──
◆あとがきより(抄録)
ここに提示した三つの短編小説は、ぼくがまだ二十代前半のころ、つまり二〇〇五年前後に書いたものたちです。〔…〕
当時、大学を卒業して働き始めたばかりのぼくは、卒業論文で描いたつもりになっていた「日本の小説」の創作論を自ら実作として提示する必要があると意気込んでいて、それはつまり『物語の構造分析』を拒絶するものこそ新しい時代の小説なのだという価値観に基づいたものでした。〔…〕「物語」的な世界観に対して必死にあらがっていた当時のぼくの若さを読み取ってもらえればありがたい限りなのです。
〔…〕三作品とも自分の大学時代の出来事がベースになっているため、ゆるく同じモチーフが使い回されています。何回も何回も文章にして追体験しなければならなかったほどの、あの二〇〇〇年代初頭の青春の日々と葛藤を真空パックして、冴えなかった元「未来ある若者」たちと共有できればと思い立ち、こそばゆい「rewrite版」としてお届けいたします。
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