室生犀星『性に目覚める頃』を読みました。

昔から思うがタイトルが悪い、人前で読みにくい。結局のところ、犀星による「オレンジデイズ」であり「若葉のころ」であり「檸檬のころ」であると言ってくれればよいのに。

しかし中身はそんなに爽やかなものではない。懸想した女がさい銭をくすねるのを、自分でまた父親から盗んだ金で工面したり、その女の雪駄を盗んでみたり、盗みが連鎖する話が続く。

詩作仲間のモテ男も最後は死ぬ。けれど、肉体関係を持っていた茶屋の女にも病気がうつっているらしいようなことがわかると途端に嫌悪感を主人公は催す。

最後は遊廓。要は寺のぼんぼん息子が遊びをおぼえるまでの話。犀川の自然を背景とした地方都市での男の子の成長物語といえばそうなのだけど、多分に自伝的な要素も多いのだろうと想像されることも含めて、もはやあまりいま読まれることはないのだろうと思った。

今、ウィキペディアを確認したらタイトルは編集の滝田樗陰が勝手に書き換えたものだそうだ。やはりそうだったか…。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA