八重洲ブックセンターのこと

人生の各段階において行きつけの大型書店というのは必ずあって、中学生の時までは横浜・川崎の有隣堂、高校のときは立川のオリオン書房だったりフロム中部の新星堂(むかしは新星堂書店というのがあって、カバーの紙質が良くて好きだった)、大学の時のブックファースト渋谷店(これはもう今はない)、そして社会人になってからの八重洲ブックセンターがそれでした。

ぼくは社会人の最初の五年間を茨城で働いていたのですが、会社の寮までの高速バスが八重洲から出ていました。なので、社会人になってから東京に遊びに行って、帰りに「東京の出版文化」を金に糸目をつけずにしこたま買い込んで帰りの高速バスに乗り込む、その最後のショッピングスポットが八重洲ブックセンターでした。

以前は一階が文芸書で、そこのロシア文学の棚の前であえて友人と待ち合わせてみたり、あとなぜか大学時代の後輩の女の子とばったり階段のところで会ってちょっと立ち話したりとか、そういうちょっとした思い出がある本屋です。

社会人になってからも、最初のころは最上階の(文庫売り場のさらに上に行くには階段を上る必要があり、あのラスボス感が良かった)洋書と芸術書売り場で本を選ぶのが本当に楽しかった。会社員として働くことに腹をくくってからはビジネス書フロアの奥の方で原価計算の教科書を買ったり、東京駅近辺の本社に異動になってからも最近でもパワーポイントの本だったり英会話の本だったりを、オアゾの丸善よりもサラリーマン風の人が少ないので心行くまで選んだりするのに重宝していました。

そんなわけで、本屋というのはだいたいその棚の並びとか本のセレクションとともに記憶されているものなので八重洲ブックセンターがまた新しいビルに入居すればまた新しい本屋として利用することにはなるのでしょうが、ひとつまたぼくの慣れ親しんだ東京の風景というのが消えてなくなっていくのは寂しい限り。

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