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生と自己とスタイルと 霜栄『生と自己とスタイルと』

 西鶴の文章みたいに連想でどんどん文があっちこっちにいくのですが、押さえるべき着地点にはちゃんと戻ってくるのが面白い――「話が少し本題に逸れてし まったようだ」というように。軽さを装いながら言うことはちゃんと言う。そういう本と出会うのはなによりうれしいものです。「スタイル」「意味」「物語」 といったキーワードを、村上春樹、吉本ばななをはじめ様々な表象を縦横無尽に例示して深く深く突っ込んでいきます。スタイルを考えるにあたっては基本文献 です。でも在庫がありません、曜曜社さま、たのむから刷ってください……。
大学デビューのための哲学
入不二基義/大島保彦/霜栄『大学デビューのための哲学』

 元も含め、駿台予備校講師三人による哲学の本。霜氏はサザエさんを、大島氏は三角関係を、入不二氏はプロレスをそれぞれ例にとって独特な哲学を展開す る……けれども、三人は三様に同じことを言っているんです。それがスタイルの違いということなのでしょう。
 とくに、受験勉強といわゆる大学の「学問」との間の橋渡しに最良の一冊だと思います(もっと早くに読んでおけばよかった……)。ついこの前までルーズ リーフに蛍光ペンやサインペンでぬりぬりぺったんしていたのに入試が終わって大教室に座ると、どうして校章の透かしが入った分厚い大学ノートに万年筆で ノートを取らなきゃならないの? そんな必要はなかった。大事なのはスタイルを貫くこと。
生き方のスタイルを磨く
齋藤孝『生き方のスタイルを磨く』

 新たなスタイル論の古典です。齋藤孝のスタイル論は氏の身体論との関わりが強く、「運動性」を具体にも抽象にも問題にします。スタイルとは静的な構造で はなく、常に運動性をはらみ成長するものだという考え方には勇気付けられます。
 『天才の読み方』『「できる人」はどこが違うのか』もそうですが、この本を読んで印象的なのは、スタイルという抽象的な概念はどうしても具体的なものの 中でしか説明がしにくいということ。それはすなわちスタイルは具体的に実践するものであり抽象的に論ずるものではないということなのかもしれません。
齋藤スタイル
齋藤孝『齋藤スタイル――自分を活かす極意』

 齋藤孝は仕事の多い人ですがこれを読むとそのどれもが「スタイル」という言葉でつながっていることがわかります。手っ取り早く氏の仕事を知りたい人には 最適のサマリーになっています。それにしても恐ろしい量の著作です。自分で「量こそ質」とか言っていたので有言実行なわけですね。以前は全部買ってやろう と思っていましたがもう、無理です。
天才の読み方
齋藤孝『天才の読み方――究極の元気術』

 ピカソ、宮沢賢治、シャネルの個々のスタイルを紹介しながら最後にそれを普遍化したスタイルとしてまとめるというこの本の作りはちくま新書の『「できる 人」はどこがちがうのか』と基本的に同じです。
 天才だけではなく「スタイル」という視点で自分の周りの人間を見てみるといろいろ発見があると思います。もちろん、自分に関しても。
私のスタイルを探して
光野桃『私のスタイルを探して』

 どうしてもっと早くこの本とめぐり合うことができなかったのか……しかも、古本屋の百円コーナーにあった本なのです。
 ファッションという視点からの「スタイル」論です。基本的に、僕が考えてきたことをなぞる内容なのですが、ファッションという人に見える部分での話なの でより具体的です。

独り善がりは少しも美しくない。スタイルは他人の共感を 呼ぶものでなくてはスタイルとは言えないからだ。人に認知され、共感され、人と共有できるもの、それがスタイルであり、ファッションであろう。(本文よ り)

 スタイルという目に見えないものをどう具現化するか? その一つの方法としてファッションを考えていくのに最良 の本です。
成井豊のワークショップ
成井豊『成井豊のワークショッ プ――感情解放のためのレッスン』

 著者は演劇集団キャラメルボックスの創設者。プロの役者になりたい人のために書かれたと銘打ってありますが、もっと広くこの本は読まれていいと 思いました。演技というのはむしろ日常の中でのほうが過剰であるように思います。「感情解放」と副題にあるように、この本は徹底して、役者にありがちな過 剰なプライド・功名心・羞恥心を捨てることを要求してきます。
やるならば、本当の演技を。そして、本当の演技とは何かをこの本は教えてくれます。
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