筑摩全集類聚『太宰治全集』12

「太宰治」以前の習作編。本当に、作家というのは、いつから作家になるか? この習作自体に収められたのは、自らの出自や非合法運動などに取材した作品が多いものの、それらはその後の、プロの作家となった後に同じモチーフが描かれるかと言えばそんなことはないし、こんな三人称の小説を「太宰治」以前の津島修治が書いていたということがやはり驚き。そこには明確な断絶があるように思えます。幾つかの作品はもちろん、「葉」などで引用されますが、それもおそらくは太宰治の「思い出」的なフィルターをくぐり抜けられたもののみ。だって、太宰がプロレタリア作家であったならば、まだ納得がいくもののみここにはあるのです。「太宰治」がいかにして生まれたのか? 頭の悪いぼくには、この習作集を読んでも、なかなか水脈を見つけることができなかった。

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