玄侑宗久『現代語訳 般若心経』

を、読みました。

般若心経に入門するにあたっていきなり岩波文庫から入ろうかどうか悩んだのですが、ここは素人たることを自覚して……。結果として、非常に分かりやすかったです。そしてその「わかりやすさ」に溺れないようにすることをも、本書は警告してくれるところが素晴らしい。玄侑宗久は、芥川賞作家であることしか知らず、作品は一つも読んだことはないのですが仏教的な検知から小説を書いているのでしょうか。本書は、単なる般若心経の私訳にとどまらず、現代科学の知見も取り入れながら、そのものの見方・考え方が奇しくも仏教的な世界観と通ずることを教えてくれます。もちろん、本書を読んだからといって、悟りを開けるとか胸のつっかえが降りるとか、そういう安易な自己啓発の効能はないのですが、もしそういうことへの期待に答えるものがあるとすれば、意味を超えて般若心経を暗証するところから始めよ、という著者の一つのこだわりがそれに当たるのでしょう。きっと齋藤孝も同じことを言っているはず……。

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