青木新門『納棺夫日記』

先週、祖母が亡くなり、納棺にも立ち合いました。祖父のときも、実家での納棺に立ち合って、その時に「ああ、この人達が映画でも見た『おくりびと』なのか」と妙に感動した覚えがありました。祖母は、葬儀場での納棺でしたが、明るい空間で、妙にこざっぱりとした印象もあり、納棺一つとっても色々なんだなと、おそらくは一生にそう何回も経験することではないのでしょうが、葬儀も終わってから何となく葬儀業界のこととか、お経のこととか、仏教のこととか、最低限知っておくべきことは知っておきたいなと思い、いくつか本を買って読んでいます。特に、斎場の方のプロとしての仕事ぶりに感じ入るところも多々あり、自分の悲しみもそっちのけでビジネスとしての「葬式」についてベーシックなところから知ろうと思っています。

ひるがえって本書は不思議な本です。もちろん納棺師をなりわいとしている著者の半分小説、半分死生観の講釈、という感じで、全篇何か物語が開陳されるわけではありません。ただ、様々な光景を通じて、「光」というキーワードをもとに親鸞に近づこうとする著者の仏教観(?)が、まさに著者自らの言葉で語られていくのは、日本海側の白い景色の中で黙々と生を営んでいく強さを感じさせます。本書でも引用されていますが、何があっても平気で生きていける態度を悟りと言うというのは、確かに一つの考え方だな。

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