渡辺利夫『神経症の時代 我が内なる森田正馬』

文春学芸ライブラリーに採られているのは知っていましたが、金銭的都合から古本で購入。どうでもいいですが、TBSブリタニカって、いまは阪急コミュニケーションズになっていたんですね。ウィキを見て初めて知りました。

本書は、森田療法に関わる三人の評伝です。倉田百三、森田その人、そして後継者であった(講談社新書の元祖『森田療法』の著者である)岩井寛。特に、後世の我々にとっては、既に学術的にきれいに整えられた森田療法の姿を手にすることができるわけですが、森田その人の生涯や、その療法によって人生を取り戻していった人々の半生を読むことで、森田がゼロから生み出していった、そして当時のアカデミズムからは程遠い場所で孤軍奮闘し、その後の後継者のめぐり合わせによって受け継がれてきた森田療法の始源に触れる感覚がします。

特に巻末の参考文献一覧は、森田療法と言えばこれ、という著作物が乏しい現代にあって非常に参考になります。一時期に比べて、精神医療に対する期待値のようなものが随分と薄れてしまって、それはつまり「精神科医」なるものがあまりにも大衆化してしまった結果なのかもしれませんが(それ自体は否定されるものではありませんが)、改めて言葉を読むことによって自分の人生を鍛えていくことの意義みたいなものを、若い人特有の病理に帰せず、持ち続けていきたいと思う次第です。

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