スガシカオ『731(+1095)』

スガシカオによる初期歌詞集。といってもデビューからすると六年分が収録されています。

前に『ハチクロ』のアニメを見返していた時に、改めてスガシカオの曲はいいなとしみじみ感じました。ツタヤで何枚かかりてきたのですが特に「そろそろいかなくちゃ」みたいな、単に会社を午前中だけズル休みする歌なんだけど、やけにしみじみしてしまう。これもまた三十台あるあるかもしれません。

あるいは『ハチクロ』にからめて言えば、初期のアルバムの中に出てくる男の子像が真山巧のモデルでもあるらしいので、もうすこしちゃんと聴くために歌詞を読んでみようとおもい、購入。

本人も書いていますが、「街」というのがよく出てきます。まるで鳥の目になったように、ぼくたちが毎日くだらないことでウロウロしているその「街」を描写するその言葉遣いはとても優しいです。そしてその目は、この今現在というよりもすこし遠くの過去を見つめていて、そしてもう「あの頃」なんてどこにもなくなってしまった「街」をもう一度見下ろしている、そういう眼差しがまあ、三十代の男にはけっこうクルものがあります。

思い出を思い出していた頃を、また思い出す、みたいな。あの頃は、よくあんなことを思い出していたよな、今となっては思い出すことすら少なくなってしまった。村上春樹は、遠くから見れば大抵のものは美しいと言ったけれど、それよりももっと遠くまで歩いてきてしまったぼくは、トボトボと、それでも前に向かって足を踏み出すしか無いのです。

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