筑摩全集類聚『太宰治全集』5

なにしろ高校生の時に一番読んでいたのが「正義と微笑」である。新潮文庫の解説には青春小説とは大人が読み返すべきものなのかもしれない、などと書いてあった記憶もありますが、おじさんになった今読み返してみてもやっぱり面白い。原案となっている個人の日記にどれくらい寄りかかっているのかわからないのですが、でもここにある、一本貫いている太い声はやはり太宰そのものに思えてならないんだよなあ。

本巻に修められているもの辺りからもっぱら戦時中に書かれたものが増えてきますが、後記を見ると、戦後表現を書き換えられたものも少なくないようです。太宰は政治について直接的にはほとんど発言をしていませんが(同時代人の誰それの発言がどうとかいうたぐいのことは言いませんでしたが)、戦時中にありながらあれほど明るい小説を書き続けていた作者の戦争に対する思いは、なにか先行研究があれば読んでみたいものです。

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