北西憲二『はじめての森田療法』

を、読みました。既に講談社現代新書にはその名も『森田療法』という先行する本もありますが、世代替わりとでも言うのでしょうか。新書の値段で森田療法に触れられる機会はなかなかに少ないのでこういう企画は助かります。森田療法はやはり症例を読むことで理解が深まります。ぼく自身はあの凍てつくような季節はだいぶ過ぎ去ったと思っていますが、それでも思考の原型がこの本で言うところの「理想の自分」にとらわれすぎている頭でっかちな自己を今もなお厄介なもう一人の自分として付き合っていかなければならないことに辟易することしばしばです。この本の白眉はやはり、そういう自分をとりあえず棚に上げて、事実唯真、とにかく目の前の現実から逃げずに一つ一つの課題をこなしていくことの手をまずは緩めないで、なおかつ理想の自分みたいなものを削っていく=「こうあるべき」の手綱を緩めてやる、というのはつまりダメダメな自分を受けていれていくということなんでしょうが、そうやっていくうちに、ダメダメな自分を受け入れていく自分のかっこよさというか、ある種のあきらめを持って道を開いていく、その二つの運動を一緒にやっていくことが大事だと訴えている点でしょう。バランスの良い入門書です。

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