ジョン・アーヴィング『熊を放つ』

新婚旅行で行った動物園が舞台となっている小説ということで読んでみた。勘所は役者村上春樹のあとがきにある通りで、詰め込み過ぎた若書きがとにかく素晴らしいの一言に尽きる。途中までまるで『オン・ザ・ロード』のような雰囲気を醸し出しつつも、ノートブックの章ではオーストリアをめぐる第二次世界大戦の状況を様々な登場人物から語らせつつ、動物園破りの計画もまた臨場感たっぷりに描かれる。そして計画が実行に移され、青春に終焉とも言いたくなるようなガレンとの別れ……そういった様々な要素が、フルコース百回分程度には並べられていて、読み通した後かなりお腹いっぱいになる。この満腹感は、小説を読むことでしか得られないことは確かだと保証したい。

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