よしもとばなな『みずうみ』

を、読みました。10年ぶりに再読。

よしもとばななとしては『ハネムーン』で描きたかったことを10年越しでようやく、蓄えた作家としての力量を遺憾なく発揮して完成させた代表作と言っていいでしょう。中島くんが自分の生い立ちについてようやく口を開いてからは、なんとくなく涙腺が緩んできます。それは、本当に作者がこのモチーフを大事に大事にして、どうしてもやっぱりこれを描きたかったんだ、という気持ちがすごく伝わってくるからです。

良くも悪くもない、ただあの光景は永遠に同じ質量でここに、僕の中にある、そういうことだと思う。朝日のピンクは夕陽のピンクよりもなんとなく明るく見える気がするとか、気分が沈んでいると景色も暗く見えるとか、そういう感覚的なフィルターはあることはあるけれど、そこに実際にあるものは変わらない。ただ、そういうことがあったというだけだ。

この凛々しさ! この清々しさ!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA