よしもとばなな『デッドエンドの思い出』

この本の感想を書くのは実は二回目。最初に買って読んだのは、2004年の暮れ。ちょうど卒論で吉本と格闘していて、脱稿したあと、何かを確かめるように買ったのでした。そして学生生活最後の冬休みを、祖父母の家のこたつの中でテレビを見ながら、そしてカーペットの上で寝ている野良猫を撫でながら、横になってちびちびと読んでいたのをよく憶えています。本当に、昨日のよう。その後すぐ、学校が始まってから卒論は製本に持って行って、無事に提出しました。提出したあとタバコを吸いに行ったら、友だちがいて、「出したよ!出したよ!」とか言い合ってなんだかはしゃいだのを覚えています。それは、なんだかこれで学生生活が終わりなんだな、という一抹の寂しさを打ち消すかのようなはしゃぎ方でした。

そういう時にふさわしい小説だったかもしれません。

とにかく、あと一手間、が素晴らしくさえ切っている短編集です。ここで終わるのかな? というところから、もう少しだけ続きがある。そしてその続き部分がびしっと一編の小説としての完成度を高めてくれているのです。特に表題の「デッドエンドの思い出」と「『おかあさーん!』」が素晴らしい。

読書はいいもんですね。再読だけが読書です。本は良い。本は、本棚でじっと待っていてくれる。何年でも、十年でも。

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