吉本ばなな『SLY』

世界の旅シリーズ第二弾。エジプト編です。これはHIVポジティブが発覚した男と、その周辺の男女(彼らの検査結果は小説の最後まで明らかにはなりませんでしたが)が、死ぬ前に一度楽しい旅行に行こうということでエジプトに行って、エジプトの持つ死に対する大らかさみたいなものを感じ取って帰ってくる……みたいなあらすじでした。著者は文庫本のあとがきでもいろんな人から失敗作と言われたし、こういう失敗もいいのでは、と書いています。どの辺が失敗と言われたのかよくわからん。まあ、見え見えの筋書きすぎるということなのか。起承転結がはっきりしすぎているということなのか。ラストがとってつけたようだったからか。まあでも見え見えの粗筋って吉本ばななの得意技ですし、むしろこの作家は見え見えの粗筋の中に込めてくるものすごい具体的なモノとモノとのぶつかり合いに読むべきものがあるので、別にそれは失敗とはいえないでしょう。うーん、なんだろ。

ちなみに奥付を見るとタイトルの『SLY』はマッシヴ・アタック(なつかしいな……)の曲から取られたようです。PV見てみましたが、なんか間違ったジャポニズム? という感じ。歌詞も、まあ、なんか幻想的な感じです(孫の顔知ってるぞ、とか千年前の音楽聞いたぞとか、神々の独り言みたいな感じ)。SLYじたいは悪賢しい、という意味のようです。うーん、なんだろ。

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