を、読みました。
とにかく、ただただ楽しい楽しい本です。
同年代の保坂と湯浅による、リスナーとしての個人的な音楽史を様々な場面での対談を通じて深めていく、その全過程です。もちろん1982年生まれのぼくが彼らの「時代」を共有しているかといえばそうではないし、彼らの音楽の聞き方も、その年代全ての人が同じような体験をしたわけではないでしょう。それでも、深夜ラジオに耳を澄ませ、カセットテープに撮りためたかつてのぼく自身がやっていた音楽の受容の仕方は、十分保坂たちの年代とも地続きで、youtube以前の音楽の聞き方というのは、媒体がレコードかCDかといった違いはあるものの、まあ大体似たり寄ったりなのです。要は、中身はわからなくても、対談に出てくる色々な「感覚」がすごくよくわかる、ということです。音楽史というのは、結局最後は個人の受容史としてしか語れないのかもしれません。
「音楽談義」と銘打った割には音楽に関係のない話も盛り沢山で、むしろそっちの方で電車の中で思わずニヤニヤしてしまいます。特に横浜界隈のうんちくあれこれ。ぼくも中学・高校が横浜でしたので、彼らの地理感覚、土地感覚はすごくよく分かる。ある意味、内輪ネタですが、この本自体が、保坂がサーフィン雑誌に書いていた、作家としてデビューするはるか以前の連載ものが復刻されていたりと、けっこう同人誌的なノリを貫いているところがありますので、よしとしましょう。