堀江敏幸『象が踏んでも』

を、読みました。

回送電車シリーズは単行本で買ったり文庫本で買ったりしていて、どれか一つ抜けていたという認識はあったものの、買い揃えるまでの気力もなく、金曜日の会社帰りに寄った本屋で新刊文庫コーナーで拾い上げると直感的に「これは読んでいない!」という感覚を頼りにレジに向かう。何度も繰り返していますが、堀江敏幸の文章に触れることは、上質な絹の手触り、上質な醸造酒の複雑な芳香。

巻末の写真論がとても良い。

写真は論述の対象でも読書の対象でもなく、まして所有すべき品でもない。写真家が一瞬のあいだとらえた情動を、心の震えを受け止めつつ、同時にとんでもない方向へと自分自身の夢と幻想を投げ出していくフィールドのことである。

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