を、読みました。
もちろん「原作」のノベルコミックや、D特集の「文藝」はぼくの青春の墓標として今でもしっかり本棚にしまわれています。ぼくもそのときは大学生で、いたくいたくこの原作には感銘を受けたというか、心を揺さぶられました。
モチーフに反して、とにかく暗い。Dが北海道出身ということもあって、札幌にあこがれ、東京にあこがれした自らの経験も詰まっていたりするのかな、などと勘ぐってしまうととたんにDワールドが卑近に堕するのでこれ以上言いませんが、それにしても「ホンモノ」を探し続けていたらたぶん東京よりもニューヨークで、ニューヨークよりもナントカカントカでと、永遠につきない旅なのかも知れません。この物語は結局のところ、「仮面の告白」の逆を張っているというか、仮面を逆側からかぶってみせた告白、といったらいいのか。ホンモノを探し続けるニセモノの自分だけがホンモノなのだ、という悲しい現実を何度も何度も執拗に描いたものなのかも知れません。
ラストシーンにお兄さんが居ないのが、いまでもどこか心に引っかかり続けています。