辻惟雄『日本美術の歴史』

を、読みました。

一応、教科書の体裁をとっていますが、一人の研究者(それも、くせのある!)が通史を書いているという点で、よく美術出版社から出ているいわゆる教科書とは一線を画しています。その偏り具合が、むしろ教科書的な美術史しか「お勉強」してこなかった者にとっては新しく、楽しく読めました。

著者は前書きで「かざり」「あそび」「アニミズム」が日本美術史を貫く三本の柱だとはっきりと述べ、本文の要所要所でもそれを確認していきながら論を進めていきます。縄文土器から宮崎アニメまでを一直線で結ぶとしたら、やはりその三つがキーワードになるのでしょうか。その是非はともかくとして、『奇想の系譜』を書いた著者の眼には日本美術の歴史はこう見えているのだな、という好奇心を満たしてくれる一書です。

それにしてもMOA美術館の収蔵品の多いことよ……。

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