ジェフ・ダイヤー『バット・ビューティフル』

を、読みました。

作中にも描かれている通り、街から街へ長距離大陸横断鉄道に乗りながら時々停車する駅にいちいち降り立っては腰を伸ばしその空気を吸い込む、というような旅を送っているような読書体験です。あるいは、ドライブウェイを自動車で横断しながら時々ガソリンスタンドやモーテルに立ち寄って、その土地の臭いを胸いっぱいに吸い込んで回る、という。

本書は作者がジャズミュージシャンたちの評伝や写真からインスパイアされた物語、あるいはスナップショットを連ねた半分フィクション、半部ノンフィクションのような筋立てになっています。ジャズには全く蒙いぼくですが、読んでいればジャズを聞きたなるような、あるいは自動車に乗って旅に出たくなるような気にさせてくれる本です。作者の写真というメディアに対する思い入れも強く、歴代の名手たちの文字による写真帳言ってもいいかもしれません。

〈…〉演奏にのめり込んでいるジャズ・ミュージシャンの写真は、我々をその芸術的創造という行為に──あるいはその代理的本質に──限りなく近接させてくれる。ちょうど運動選手の写真がランニングという行為に──あるいはその代理的本質に──我々を限りなく近づけてくれるのと同じように。
──ジェフ・ダイヤー『バット・ビューティフル』

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA