中村明日美子『ウツボラ』はこう読め!

と、威勢よくタイトルを書いてみましたが色々考えた結果、以下の話の流れが前段にあると考えると、おおよそ矛盾なく読解できるんではないでしょうか?

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二つの物語が並行しています。結局秋山は溝呂木が好き過ぎて「三木桜」の手引きによってたった一度逢瀬を遂げるのですが、どうもやっぱり愛されなかったと感じた、つまり溝呂木は自分の作品しか愛せないということに思い至った。そうなれば自分を溝呂木の作品の人物として登場させればいい。携帯電話には「三木桜」と溝呂木だけを残して自殺することで、彼女は溝呂木に対してメッセージを残した。自殺すれば小説に書いてくれるんじゃないかと。最終的に「三木桜」の導きによって作品は主人公の名前を「藤乃朱」に書き換えて成功する。これは秋山の成仏の物語と読めそうです。

一方で「三木桜」は心の冷え切った自分を何とかしたいと考えていた。熱い何かを欲していた。おそらく秋山の溝呂木に対する熱の上げようを見て羨ましくなったのかもしれない。その熱さを自分が先に手に入れてしまいたい。それで「朱」を名乗ってパーティーに行って溝呂木と会った。既に「ウツボラ」は話題になっていたから、盗作のことがバレては困ると溝呂木はおののき、なすがままになってしまった。秋山の死後、再び「三木桜」として会うようになった彼女の身体は温かい。これは既に熱を得て変化した女の物語と読めるのです。結局ほんとうの名前は最後まで明かされません。

ただ、秋山がアパートと別に部屋を借りる財力があったのか? が謎。三木が横領した金はおそらく整形費用に充てられているはずなので、お金がかかることは全部三木の仕業と考えるとあとで秋山が三木に秘密にしていたという部分がつながらなくなってしまいます。あまりここは深入りしないほうがいいのかもしれません。あと、衝撃(笑撃)のラストシーンは辻くんの子供ってこと? それとも溝呂木が最終的に若返ったということ?

と、多少良くわからないところはありますが、この「ネタバレ」は全然バレていない! という方がいらっしゃいましたらぜひご一報を。

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