無題3

わかっているから言えることがある。わかっているから言えないことがある。わかっていないんだから知ったかぶりをするのだし、つじつまの合わないことを言い立てる。出来るふりをする。けれどそれは単純にいえば自分を守るためであり、自分の過去を守るためである。

我々は自らの過去を容赦なく切り離し、これまた容赦なく糾弾すればよい。もっと自分のことなど棚に上げ、もっと責任とかそういう事抜きで騒ぎ立てたらよい。
あなたは全然偉くないし、捨てるものなど何も無いし、守るものだった何も無いのだから──というつもりで、いたらいいのだ。
なんの考えもなしに高笑いすること。
わかったふうなことを言いながら、そんな自分を茶化すこと。
相手を受け入れながら時々はしごを外してやること。
そういう演技だよ、演技。
「役者になりたい」
しかし、決定的に観客不足であり、役者は最後に観客と主客べったりズムに陥るのだけは潔しとしない。私は私小説を書きたいのではない。太宰治になりたいのではない。ただ、言いたいことを言いたいだけなのに。

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