村上春樹『1Q84』BOOK3

を読みました。

以前のエントリー
にも書いたとおり、この作品は過去の村上作品の総仕上げという感想は変わりません。ただ今回はそのことに対する期待が「新たな方向性が示されるのか?」という、ある意味では読者のエゴに絡め取られて空振りを食らう、というのが正直な反応ではないでしょうか。アマゾンのレヴューを読んでいても、そういう感想が多いようです(青豆さんのキャラは村上作品の女性の中では高評価のようですけどね)。

緻密な文体は、既に示された「入り口を遡上する」という結末に向けてもどかしいくらいに丁寧に物語を進めていきます。『ハードボイルドワンダーランド』や『アフターダーク』との類似はきっとまたいろいろな人が正確に指摘してくれるでしょうからここでは書きませんが、やはり既視感のある結末、展開。

もちろんそれが良い悪いというのは読み手の問題であるし、作者は同じ主題をこれでもかというくらいに変奏させて作品を発表してきた経緯もあるので一概にそのことを云々することはできないけれど、やはりそれでも過去の作品を丹念に追ってきた読者にとっては物足りなさが残るというのは正直なところでしょう。

BOOK2を読み終えてBOOK3の予感はしましたが、BOOK3を読み終えてBOOK4の予感はしない。そこでBOOK4が企画されるなら(あるいはそれに代替するなにかが発表されるなら)そこで初めてぼくたちは新鮮な驚きを得られるような気がします。何度も繰り返すようですが、これは読者の問題ではあるのですが・・・。

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