少女漫画が好きだ!

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恒例の三冊まとめてレビューです。

☆岩本ナオ『雨無村役場産業課兼観光係』第2巻

これまた飽きさせない、裏切らない漫画家さんです。「なんにもない」と思われがちな田舎、そして観光名所として盛り上げようとしている桜の大木にも由来がない──けれど、なくてもいいじゃないか、あるいは「みんなの大切なものばかりじゃないか」と悟っていく主人公銀一郎の心の動きは、村に住む他の人びととの関わり合いの中で確実に育っていっている。その有様が、読み進めていくとだんだんリアルなのかノスタルジーなのかわからなくなってくる。「揺らぎ」のあるストーリーテリング。

一方でメグの恋愛はうまくはいっていない。「女は三竿さんみたいに美人でやせてるほうがいいよ」とつぶやく遠景は、こっちまで泣けてくる。けっこうひねくれていながら、舞台が好きだったりする、その一瞬見せる「好きなものは無条件に好き」というキャラクター設定が実に上手い。人間関係の濃密な田舎で大人でいなければならない場面も多い中で、少女性を宿し続ける姿が、決して「普通の」少女漫画ではヒロインになれないメグを引き立たせているように思う。

併録の「しだいに明るむ君の暁」も秀逸。終盤でガーゼがはがれる場面は本当に驚く。ぜんぜん読めてなかったじゃないか、と猛省に駆られる。それはたぶん、結局自分もまわりでぎゃあぎゃあさわいでいるだけで苦しんでいる当人の心の中なんてぜんぜん想像できていなかった後味の悪さ。でも、そうではなくて、たぶん、主人公の友達たちは精一杯気を使っている。それでもなお、というところか。だからこそ胸をかきむしられるのか。

岩本ナオはもはや文学です……。惜しみないくらい私は絶賛します。

☆西炯子『娚の一生』第2巻

第1巻は今から思えば初老の大学教授と30代半ばのドロップアウトキャリアウーマンが一つ屋根の下に住むという状況設定の不自然さを消火して回るのに忙しかったように思いますが、第2巻になってようやく二人の物語が始まります。子どもを使うのはあこぎな展開かもしれないですがきっちりドラマに仕立ててくれているのは作者の力量を物語っていると思います。

話変わりますがここんとこ本家マーガレット系はジャケ買いでとんでもなくハズレが続き、一方で上記2作といい「坂道のアポロン」といいフラワーは裏切らないなあと…「小学六年生」だのなんだの休刊だけど小学館がんばれ。

☆いくえみ綾『潔く柔く』第11巻

いよいよ頂上決戦の模様です。カンナと禄。似たような過去を背負った二人がだんだんそのことに気がついていく。

ひとつ違えば
私も違う言葉を返す
少しずつズレが出来て
前とは違う道になる
そこからさらに枝分かれして
ちがう未来になる……

カンナのこのモノローグが全てを語っているような気がします。もちろん禄は違う角度からこの言葉に返歌を送る。この二人の応酬が「罪悪感」というキーワードを軸にどうぶれていくかが見物。

個人的には清正(一恵とはまだつきあっているのかな?)だの朝美だのをこの期に及んで登場させるのはどうかなあ……という気がしないでもないですが(作中でも「何この同窓会状態」と言及されてるけど)、今後どう動くかな──朝美が来るとなると修羅場が再燃しそうだが……高校卒業後って朝美とカンナのつながりってぷっつり切れてますよね。

さてさて長いエントリーとなってしまいましたが、皆様もぜひぜひ素晴らしい漫画ライフを。近刊はついに復活の『僕等がいた』と岩本ナオの天狗の子最新刊ですね!

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